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「それで、俺達に何の用だ?」
「単刀直入に言うか回りくどく言うか、どちらがいい?」
「その時点で既に回りくどいですよ……」
ネオの一言にニキータは笑みを浮かべながらテーブルのボトルを口にした。
やがてレオ達の背後で扉の閉まる音がする。
その扉を守るようにドミトリーが腕を組んで、上官と若者達の話を見守るようだった。
「ならば率直に言おう、我々帝国軍は君達を登用したい」
「へぇ、そりゃまたなんで」
「理由はふたつある。ひとつは単純明快、君達は腕が立つからだ。ふたつめにレオ君、君はかつての連合軍の英雄として名を馳せたケリー・アークレットの息子だそうだな」
「親父のことはあまり覚えていない」
「そりゃそうだ!君の年齢から考えるに、君が物心ついた時からケリー氏は銃を片手に我々を苦しめていた」
背後に立つドミトリーがニキータに同調するように笑い声を上げた。
「忘れもしませんな、三年前の連合軍の大反抗作戦。ありゃド肝を抜かされた」
「あぁ、あれは東洋の作戦の応用だとか。よくもまぁあんなことを思いつく」
「親父はあんた達、帝国軍を散々に苦しめた最悪なヤツだと聞いている」
レオがケリーについて覚えていることと言えば、幼少期に抱かれたこと。
母親以外の誰かに抱かれたのはそれっきりで顔は全く思い出せない。
あとはケリー・アークレットといえば教科書や歴史書にも登場する有名人でかつての戦争で帝国軍を苦しめた「最悪なヤツ」と紹介されるほどだ。
だが、それは帝国の教育だからこそそう記載されるのをレオは知っていた。
「確かにケリー氏は我々は苦しめた。だがあれほど柔軟で、奇抜で忠実なる兵士はそうはいない。連合国の首都陥落寸前から四年間も粘ることができたのはケリー氏がいたからだ」
「あんたは帝国の兵士だろ?そんなに擁護していいのか」
「今やそんなことは関係無いさ。戦争で勝敗はあれど、優秀な人物は称賛されるべきだ。それに私はケリー氏と一戦交え、敗北している」
レオは内心驚いていた。
帝国の書物では痛烈に批判されていた父親が、帝国の人間からこうも称賛を受けているとは。
父親の思い出はほとんど無い。
だが母親から聞いた父親のことを、父親の噂話、伝説……そういった話をレオは誇りに思っていた。
「俺の親父が本当にクソッタレだったか、それを知りたい」
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