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コルポシアとロディニアの国境から少し離れたところにカイという町がある。
コルポシア領カイ。
元々はロディニア領だったこの町は先の戦いでコルポシアに占領されてから終戦協定によりコルポシア領となった。
今年でコルポシア領になって五年が経つ。
カイはロディニア領だったことと、首都からかなり郊外であることから今でも人口の大多数はロディニア人である。
この町のコルポシア人は役人か兵士かその家族達だ。
町自体は郊外ということもあり人口は少ないが、役所や学校、中規模な市場もあり、そこそこ賑わいを見せている。
カイの住宅街のひとつに廃業したバーがあった。
バーの名前は『レベル』。
戦前は町の憩いの場として賑わいを見せたが、戦争が始まり店主が徴兵されそのまま廃業となってしまった。
だが廃業となった今ではここは若者達の集会場となっている。
今日もそこには若者がいた。
一人は黒髪の男で足を机に投げ出し、タバコを吹かす。
もう一人は女で弾薬をひとつ食わえながらマガジンに狙撃銃用の弾薬を込めていた。
そこにまた一人、慌ただしく扉を開けながら入ってくる。
「帝国さんから支援要請だ」
「内容は?」
「南口に賊が出た、数は十数名」
「賊なら兵隊さんでなんとかなるでしょう?」
「それが兵隊さんは周辺索敵に出かけていて留守の兵士だけでは分が悪いんだと」
「そこでピクニック中の兵士に代わって俺達にお鉢が回ってきたわけか……」
黒髪の男はふぅーと煙を吐き出した。
向かいに座る女は待ってましたと言わんばかりにニンマリと笑みを浮かべ、最後の弾薬をマガジンに押し込んだ。
「久しぶりの要請だ、派手に行こうぜ」
「りょーかい!」
「ほどほどに経費削減に協力してくれよ……」
要請を持ってきた男が頭を抱えるころには、意気揚々と黒髪男と狙撃女は外へ飛び出していた。
よく耳をすませば、銃声が聞こえる……確かに南だ。
うし、と黒髪男は拳を叩くと先行し駆け出した。
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