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という云われがあるわけでもないんですよ。唯一が酒一升。
だから、もしかしたら、そのお酒の方が何かあったのかも。
とにかく近くを通った人に、元居た場所まで運んで欲しい。
そのように頼むのですが、どうも聞こえていないらしい。
運んでもらえないどころか、石が喋れば驚くか怪しむでしょ。
完全に無視なんですよ。段々重くなるオッパショ石でさえ
負ぶってもらえたというのに、私、そういう悪さはしません。
確かに多少は、重いですが。ダイエットしたくても石ですし。
ところが、ある夜に泣いていたら、別な酔っ払いさんが来て
「おまえさん、いい酒の匂いだな。持って帰って舐めようか。」
いやいやいや。私は元の位置に戻りたいのであって。
あらあらら。どんどん故郷から遠くなる。時々には酒石様なんて
妙な名前で呼ばれて、酒ぶっかけられるようになって、ヒック。
日本全国津々浦々の酔っ払いさんに、色んな酒を呑まされて。
ヒック。こっちも酔っ払いますから、昼間は寝てます。
夜になると酔っ払いのみなさんが。ヒック。私を少し運んでは
酒の肴なのか祀ってるんだか。判らないままに。
いま沖縄に来てます。泡盛おいしいです。ヒック。
でも、私は泣き上戸なんですよ。うわーん帰りたいよー。ヒック。
絶対、いつか祟り殺してやるからなー。
ヒック、嘘ですから誰か運んでくださいませ。うわーん。ヒック。
だから『酔泣石(ヨナキイシ)』です。ヒックヒック。
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