第1章

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 付喪神という妖怪がいます。物を大事して百年も経て、 霊魂が宿って怪異を成す。という百鬼夜行のアレの事です。  付喪は九十九と書くのが本来で、喪に付くのは当て字。 九十九は、あと一つで百になる程の永い年月や種類の事。 特に99や100に固執しなくてもいい。八百万の神が 800万ではなく「凄い沢山だ!」というのと似てます。  古い年月は、豊富な知識や経験を意味するので、神と 最後にくっついているらしいが、妖怪でも付喪神と呼ぶ。 この理由は本題に重要でない、貧乏神も死神もいるぞ。 って事で、一つここは手を打っていただきたいわけで。  さて前置きが長くなりました、以上が自己紹介です。 コンバンハ。私、この度晴れてツクモガミと成りました。 東北出身の『酔泣石(ヨナキイシ)』です。どうもどうも。  本家の夜泣き石さんとは、随分違いますのでご注意を。 私は夜に泣くわけじゃないんです。でも、ほとんどの場合 夜に道端におります。何で夜かっていうと酔っ払いさんが まぁ、普通は夜しか歩いてないんですよ。  もうお解りですね。私は酔っ払いさんに運んでもらって 旅を続けています。ある日ある時、ある場所で! 私に酒一升をぶっかけた酔っ払いさんがいましてね。 酔っ払いさん、勢いでやったんでしょう。酔いが醒めたか、 「なんて勿体無い事を!」と、わぁわぁ泣き出した。 私が皆、呑んじゃった。というか染みこんだというか。 「悔しいから、持って帰る!家で石を舐めて、肴にする!」 言うのは簡単ですけど、私結構、重いのです。 しかも、酔っ払いさんですから、あっちへフラフラ。 こっちへフラフラ。危なっかしくて堪らないですよ。  それでも、休み休み運んでいく。でも酔っ払ってますから 結局、ダウンしてしまい。道端にしゃがみこんで寝てしまう。 小一時間、そうしてましたかね。酔っ払いさん目が覚めた。 急に起き上がって、私の事なんかすっかり忘れてご帰宅です。  いやいやいや。待ってください。私も居た場所に帰りたい。 ご近所付き合いってのもあるんです。こんなどこだか知らない 道端に置いて行かれても。そう思うと悔しくて泣きました。  なので『酔泣石(ヨナキイシ)』です。どうもどうも。  でもね。正直申しますと、石ころになってから相当長い事 山道の片隅に転がってましたが。神仏や妖怪になるような石。
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