第1章

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 私は漫画家先生のアシスタントをやっています。 なので私も、無名ながら絵を描く仕事です。 先生の仕事場は、郊外の御自宅、一戸建てなので 自由という程でも無いまでも。ご近所に迷惑を、 掛けないのなら、猫や犬を飼う事が出来るのです。  まぁ先生の猫は以前は普通の猫だったのですが、 最近、ちょっとおかしな事になりまして。 詳しくは過去作品「ライト」「ライト2」等を ご覧下さい。(宣伝乙 by ライト)  とはいえ猫を飼えるというのは、羨ましいなぁ。 私は先生の駅の沿線上に住んでいるのですが、 実はこの沿線上に、多く漫画家さんや編集さんが お住まいの駅があり、助っ人アシで他の先生へ 行くこともあるので便利なのです。  猫を飼ってる、漫画家先生って結構いるもので 原稿がああああ!とか、そういうイメージですが 案外、ちゃんと大人しくしてたりします。  まぁ、メメ先生のライト君だけは別なんですが。 他の先生の家では、作業待ちの間、撫で回したり 猫ジャラシたり、ボールで遊んだり。 癒されて、可愛いくて恍惚なのですが。  アシ作業が始まると、仕事部屋へ移動します。 すると、それまでアシ仲間にモテモテだったのに 急に行っちゃうので、寂しいのかニャアニャアと 鳴きながら着いて来ます。  なんですか、もうお仕事なんですか、構ってよ! という感じが可愛くて堪らないのですが、残念。 仕事場には入れてあげられないのです。ごめんね。 (前述のメメ先生の家の、三毛猫ライト君は アシスタントが出来るので入ってきます。 最近ではミスを指摘してきたり、少しイラッとな。)  結果論で言うと、先生原稿待ちが猫タイムなので 遅筆な先生程、猫への想いが強くなります。 いや飼い主は先生なんですけど。それと遅筆で 苦しむのはアシ仲間も、同じなのですけれども。  そんな気持ちを抱いて、自宅に帰ります。 我が家はペット禁止のアパート暮らし。 お出迎えの猫がいるなんて事もないのです。  でもこの一人ぼっちの、帰宅の寂しさのせいで 偶に猫さんが迎えに、エサをねだりに来ないかと。 そういう期待もしてしまうのです。はぁ。  ニャア。  あれ?気のせいじゃないと思う。聴こえた気が! どこ?どこ?この狭い部屋のどこかに、猫さんが?  その小さな小さな赤茶の仔猫は、ベランダで 夏の終り秋の肌寒い夜風に、心細く鳴いていました。
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