キミと、みたい、花火

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「なんで……戻ってこーへんかってん。」 孝生の隣に体を狭くして腰を下ろし、膝を抱えてぼそりとボヤく。 まだ体の中に残る、孝生に対するぎこちなさが、俺の視線を孝生から反らさせていた。 「……人めっちゃ多なってったし、前まで戻りづらかった。 お前は何でここ来てんねん。花火見たかってんやろ?あいつらと一緒に前で見たらええのに。」 孝生の言動に、ぐっと腕の力を強める。 ほんまにこいつは何もわかってへん。 なんで俺が花火行きたいんかも。 お前への気持ちも……。 より膝を自分の方へ引き寄せて、口許を固く閉ざしていると、答えを促すように孝生が俺の名を呼んでくる。 「……桜太。」 その柔らかな声色が、俺を包み込むように体に響いてきて、振り絞るように唇を動かした。 「っ、お前がおらんかったら、意味ない言うてんねや。」 自分の感情が胸の中心で渦巻いて、握った拳をさらに握り締める。 「孝生と一緒ちゃうかったら…………花火なんか、見たない。」 顔を限界まで伏せて、そう言い切った瞬間。 ダンダンダンッと湖を震わせる爆発音が、花火の始まりを俺のもとまで伝えてきた。 ヒューッと大気を突き抜けていくその音色に導かれるように顔を上げると、大きく開けた夜空にパーンと弾ける三発の中玉花火。
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