キミと、みたい、花火

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その散っていく火花の余韻に浸る間もなく、間髪入れずに次の花火の点火が始まる。 湖の上に浮かべられた台船から次々と連続で打ち上がっていく様々な色合いの花火に、思わず感嘆の声が漏れた。 「すげぇ……。水ん中から、花火飛び出してるみたいや……。」 体の芯まで響いてくるような打ち上げ音。 夜空から降り注ぐ光のシャワー。 そして、その光が湖に反射して、水面にもうひとつの美しい華を咲かせる。 視覚から聴覚から、肌に感じる振動から……もうそのすべてに圧倒されて。 瞬きをするのも忘れて輝く空を見つめていると、すぐ真横から苦笑する孝生の声が俺の思考を邪魔してきた。 「……何が『俺がいんかったら花火見たない』やねん。今、俺のことなんか忘れて夢中で見とるやんか。」 「っ!違っ……――っ!?」 孝生の言い分にはっとして、否定しようと首を回しかけた瞬間、孝生の手のひらが俺の手の甲に重ねられた。 突然与えられた予期せぬ温もりに、心臓が跳ね上がる。 「ちょっ、孝生!?っ……手!!」 顔に上がってくる恥ずかしさから、逃れようと腕を引くも、さらに強い力で押さえ込まれて。 ますます顔を赤くしていると、俺との距離を少し縮めた孝生が俺の耳許に顔を寄せた。
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