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「花火に魅入っとって、俺らのことなんか誰も見てへん。……これくらいいいやろ。」
そう言われて回りに目を向けると、始まったばかりの花火から目を反らすヤツなんていなくて。
確かに、俺らが手を繋いでようが、そんなの誰も気にしてへんけど。
せやけど、これじゃ……
「っ……!」
バクバクと顔にまで響いてくる胸の鼓動。
自分の心臓がうるそうて、俺が花火に集中できへんやん!
そわそわしながら、それでも何でもないように装って夜空を見上げていると、再度孝生が口を開く。
「あれ、嘘やから。……お前と外で会いたない理由。」
「…………。」
振り向くと、じっとこっちを見つめる孝生。
余計に心拍を増す俺の瞳を射抜くように見て、言葉を紡ぐ。
「ほんまの理由は……お前に触んの我慢すんのが、しんどいから。」
「…………え?」
孝生の言った言葉の意味が、いまいち理解できなくて聞き返すと、懺悔するように目を伏せてきた。
「お前、人前で俺とこういうことすんの嫌がるやろ?やから外では極力普通の男友達みたいに接してる、けど――。
それが今日みたいに長時間続くと…………俺としてはつらい。」
「――――っ!」
だんだん孝生の言おうとしていることを、俺の足りない脳みそが理解してきて……体温が急激に上昇を始める。
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