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「なぁ、花火行かへん?」
夏休み真っ只中の茹だるような暑さの中。
教室の椅子に逆向きに腰掛け、持参のうちわを羽たつかせながら、ひとつ後ろの席に視線を送る。
「はぁ?今日のか??」
俺と同じようにうちわを持つ手を一瞬ピタリと止めた後、怪訝な声で心底嫌そうな顔を向けられた。
……この反応。
「無理。あっついし、ダダ混みやろ。」
予想通り、考える素振りも見せずに即決で断るそいつに、俺の口先が思いっきり尖る。
いや、そう来ると思ってた。
思ってたけどなぁ!!
「孝生(たかお)、そればっかりやん。俺ら夏休み入ってからどっこも行ってへんで。」
不機嫌な表情を全面に押し出しアピールするも、ダルいとばかりにこれ見よがしにうちわを上下させ、そっぽを向くバカ生。
「それなら別のとこでええやろ?なんでわざわざ琵琶湖花火行かなあかんねん。」
「なんでって……」
花火大会って、なんかデートっぽいやん?
……なんて可愛いげのある台詞が言える訳もなく。
「………………別に。行きたいだけ。」
すっかり尻つぼみになった俺の言葉は、あっさりと孝生に無視された。
今日は、8月8日。
水面に咲く湖上の華
琵琶湖花火大会の日――――。
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