キミと、みたい、花火

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孝生の態度に不貞腐れて机に突っ伏し、教室内に視線を向けると、カラフルに色分けされた数十個の空き缶。 その光景にげんなりして溜め息を吐き出したところで、生真面目に色別の個数を勘定し終えた眼鏡と目が合ってしまった。 俺を見つけた瞬間すっくと立ち上がり、ずんずんと距離を縮めてくるクラス委員長。 俺の正面に仁王立ちし、くいっと中指で眼鏡のフレームを押し上げた後、憤慨した。 「桜太(おうた)!!人が忙ししてんのに、なに悠長に傍観しとんねん!」 俺の名前を吐き捨てるように呼んだ後、レンズ越しの瞳をギンと光らせてくる。 「……ちょっと休憩してただけやろ。」 「ちょっとが長いねん!んで孝生も!!ぼーっと涼んでんと、はよ空き缶集めて来んかい!!」 …………『空き缶集め』。 それが、夏休みだというのに俺らがわざわざ制服まで着込んで学校に集まっている理由。 休み明けの9月下旬に開催される学祭のスローガンが「エコロジー」に決定し、俺らのクラスは空き缶を組み合わせて一枚の大きな壁画を展示することになった。 製作に必要な空き缶の数、1万個。 自宅で出た缶を持ち寄るだけでは全く足らず、こうして休み中に日を決めて登校し、溶けるような暑さの中をひたすら空き缶を求めてさまようという、罰ゲームとしか思えない所業を個々がやらされている。
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