キミと、みたい、花火

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観覧スペースの間に設けられた通路を、孝生と横並びになってスゴスゴと歩く。 真横に広がる雄大な琵琶湖のパノラマ。 その湖から吹き寄せる風を肌に感じながら、湖岸沿いを二人で歩くというこのシチュエーション。 専ら家デートが主流の俺らにとって、気分を盛り上げるには最適な稀に見る好条件……のハズなのに。 目線を足元に下げてみると、嫌でも視界に入ってくる馬鹿でかいゴミ袋とその中に数個の空き缶。 おまけに―― 「あー、いらない空き缶ないですかー?回収してまーす。」 色気の欠片もないテンションだだ下がりの文言を、事務的に唱える俺の口。 この雰囲気ぶち壊しの二大要因が、孝生との湖岸散策を、ただ暑くて怠いだけの消化作業にさせていて……。 はっきり言って、 「盛り上がらん!!」 独り言を琵琶湖に向かって無駄に大声で呟く俺に、隣の孝生がいらぬ合いの手を入れてくる。 「……桜太。暑いから静かにして。」 「………………。」 ………………。 もう泣いてもいいですか?
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