登校

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ピピピピピッ! 服や雑誌などが散らばった部屋にスマホのアラームが鳴り響く。 「あー、もう、起きるよ!」 ベッドから降り、気怠そうに目覚ましを止める。 今日から新学期が始まりだ。 高瀬竜は今年で28歳。神奈川県の高校の教師で、現代文を教えている。 別に先生になりたかったわけではない。ただ普通に高校に行って、大学で教員免許をとったから成り行きで先生になってしまった。 食パンを袋から取り出し口に咥える。同時にカスがボロボロと机に溜まっていく。 それを気にすることなく、朝のニュースを観ていた。 「えー、いま世間を騒がしている教師行方不明事件。今回の件では…」 またか、そう思いながら最後の一切れのパンを飲み込む。 最近学校の先生の行方不明事件が多発している。しかも日本全国で発生しているということで、マスコミも盛り上がってる。 「どーせ病んで自殺でもする教師が増えたんでしょ、親とか子どもとか相手するの大変だからな」 そう言いながら立ち上がり、学校に行く支度を始めた。 20分ほどで準備は終わり、玄関へ向かった。 小さなアパート暮らしだが、割とこの落ち着いた雰囲気は気に入っている。 靴は大学を卒業して買ったものをずっと使っているので、少しずつ汚くなっていた。 そろそろ買い換えなきゃなぁ。 そう思いドアを開けた。 覚えているのはそこまでだった。
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