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「なんだ」
「もうあまり、関わらない方がいいです」
「なぜ? 事件が解決し、ここで行われていた悪事が明るみになれば、お前も自由の身になれるんだぞ」
「輝夫とひな、も同じことを言っていました。でも、死んだのでしょう。きっと、殺されたのでしょう?」
鳥の黒い瞳が、大城を見上げた。
その時、だった。
タン……ッ、壁一枚隔てた向こうから、物音が聞こえた。
大城の意識が、向けた視線の先へと一気に集中する。
「……黒沼だな」
「……刑事さん……」
鳥にしっ、と人差し指で黙るように示してから、大城は銃を構えて立ち上がった。
「安心しろ、ちゃんとお前の飼い主には会えるよ」
だから静かにしていろ。
そう言って大城は扉の脇に音も無く立った。
ゆっくりと、静かに回すノブ。
かちゃりとロックが微かに外れる音と、感触。
次の瞬間。
大城は勢いよく開け放った扉の向こうへと、拳銃を手に足を踏み入れた。
「渋谷署だ!」
足音と、物音が続く後にはゆっくりと閉まるドアがあった。
閉じられてゆくほの白いドアを細く開いた目で見つめて、偽尾白は目を閉じた。
「……だから、輝夫も、ひなちゃんも、そう言ってくれたんですよ……」
午後十一時、五十三分。
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