八章、そして終章へ

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    157 「渋谷署だ!」  そう銃を向けてラボに入った大城の視線の先には、その男がいた。 「なっ……誰だ貴様!」  黒沼健二。  パンフレットでもよく見知った顔のその男は、大城の登場に少なからず驚いた顔を浮かべたが、それはものの数秒のことだった。 「黒沼健二。元研究員である輝夫の爆死事件、水野水乃と雲居雁を利用して行われた殺人、それから電書作家連続殺人事件、それから警視庁刑事一課の刑事殺害に関して、あなたに聞きたい事があります。署まで同行願いたい」  あくまでも冷静にそう、口にしながら大城はじりじりと間合いを狭めていた。  だがラボの中央に立っていた黒沼は、大城の意図を知ると口角を上げた。 「ああ、誰かと思えば……警官殺しの、刑事か」  そう口にした男は、平然と懐に忍ばせていた手を引き出した。  手にしていたのは、やはり拳銃だった。 「……おかげさまで、キレイに嵌められたんでね」  冷ややかな銃口が、こちらへ向けられていた。  ブラインドの閉められたラボは、寒気すら覚えるほどに暗く、そして白かった。  全てが白い部屋の中には、やはり密閉されているのか、水槽に入った青く光るそれらがあった。  白い部屋が、青く照らされていた。  病的な迄に美しくさえ、あった。 「警察というところは、縦割りの組織だと知っているだろう。逆らうとは、あまり賢くはないようだな」  黒沼の顔には余裕すら除く。 「法を犯すほどには落ちぶれちゃいないだけですよ。警察学校長の黒沼さん。あんた一体、何人を殺した? BBO菌を持ち出した輝夫を爆死させたよな。巻き添え食った無関係の人間が、何人いたか知ってるか」 「さあね」 「殺らせたのは、ラボの人間かそれとも雲居雁みたいなプロか。どっちにしろ、殺人教唆は免れない。たとえ証拠がなくてもな、あんたの罪は消えない」
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