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「渋谷署だ!」
そう銃を向けてラボに入った大城の視線の先には、その男がいた。
「なっ……誰だ貴様!」
黒沼健二。
パンフレットでもよく見知った顔のその男は、大城の登場に少なからず驚いた顔を浮かべたが、それはものの数秒のことだった。
「黒沼健二。元研究員である輝夫の爆死事件、水野水乃と雲居雁を利用して行われた殺人、それから電書作家連続殺人事件、それから警視庁刑事一課の刑事殺害に関して、あなたに聞きたい事があります。署まで同行願いたい」
あくまでも冷静にそう、口にしながら大城はじりじりと間合いを狭めていた。
だがラボの中央に立っていた黒沼は、大城の意図を知ると口角を上げた。
「ああ、誰かと思えば……警官殺しの、刑事か」
そう口にした男は、平然と懐に忍ばせていた手を引き出した。
手にしていたのは、やはり拳銃だった。
「……おかげさまで、キレイに嵌められたんでね」
冷ややかな銃口が、こちらへ向けられていた。
ブラインドの閉められたラボは、寒気すら覚えるほどに暗く、そして白かった。
全てが白い部屋の中には、やはり密閉されているのか、水槽に入った青く光るそれらがあった。
白い部屋が、青く照らされていた。
病的な迄に美しくさえ、あった。
「警察というところは、縦割りの組織だと知っているだろう。逆らうとは、あまり賢くはないようだな」
黒沼の顔には余裕すら除く。
「法を犯すほどには落ちぶれちゃいないだけですよ。警察学校長の黒沼さん。あんた一体、何人を殺した? BBO菌を持ち出した輝夫を爆死させたよな。巻き添え食った無関係の人間が、何人いたか知ってるか」
「さあね」
「殺らせたのは、ラボの人間かそれとも雲居雁みたいなプロか。どっちにしろ、殺人教唆は免れない。たとえ証拠がなくてもな、あんたの罪は消えない」
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