八章、そして終章へ

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152  かたん、と小さな音がした。  明かりの落ちたラボに侵入するのは、容易いはずではなかったが幸いにも退出してゆく研究員を裏戸口で捕まえる事が、できた。  こういう時は、警察手帳が大変に役に立つ。  加えて、彼らは警視庁との合同研究プロジェクトであることを知っていたから、余計に話は楽に済んだ。  侵入した先は、雑居ビルと思しき建物を上手く利用した作りなのだと、内部へ入ってから知った。  向かいが廃墟ビルでなければ、もう少し窓側にも気を配ったのだろうが、その点を除けば流石に秘密裏の研究を行うべく用意された施設である、と感嘆さえ覚えた。 「……黒沼一人、かな」  先ほどまで窓越しに見えていた研究員の数は、七名。  白衣とマスクは身につけていたが、体格の違いから男が六名と女が一人。  更に歩き方の特徴と姿勢の差から、年齢層が幾つかに別れた。  特徴分けした六名と女一人は、既にこの建物から出て行くのが見えていた。  故に、今ここにいるのは黒沼健二が一人であるはずだった。  最も、狂気に近いものを持っていた水野や、雲居雁のようなプロを雇う連中であるからには、黒沼が単独でここにいるとは考えにくい。  カチリ  安全ロックを解除した大城は、銃を手に階段を上がった。  監視カメラは廊下に二台。  直線路とコーナーの2箇所に設置されたそれらを、避ける死角を目視で計算するが、直線路の一つがカメラを回転しながら稼動しているのを見て、その計算を改めた。 「流石、マニュアル通りか」  このまま警備会社に天下り出来たろうに、なんでまたこんなことに手を出すようになったのか。  機会があれば聞いてみたい気もした。  監視カメラが窓側を向いたその瞬間、大城は身体を滑り込ませるようにして手前の部屋ドアへと駈け寄った。  ロックを解除すべきところだが、触れたノブはするりと抵抗もなく開く。
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