八章、そして終章へ

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156  捕らえられる以前は、人と暮らしていたのだと鳥は語った。  文字も絵も自在に描く事ができ、人と暮らす事に面白さを感じていたのだと言う。  そうして、鳥が心を許した人と共に故郷の山を巡る旅に出た。  悲劇はそこから始まる。  ある時、ふらりとはぐれてしまった鳥は、共にいた人を探していた山中で、怪我をしてしまう。  そこを捕らえられてしまったのだと。 「……怪我さえ治ってしまえば、わたしは飛べるのです。でも……」  運が悪かったのだろう。  彼を捕らえた人間は、ある細菌の研究に関わり始めた研究者だった。  血中の成分を知った彼らは、目の色を変えた。 「お前は、なんともないのか。生物兵器にも使われるような細菌だっていうのに」  大城の問いに、鳥はこくりと頷いた。 「平気です。わたしたちの種族、みんなきっと血の中に持ってるから」 「種族……じゃあ、まだ仲間がいるんだな」 「多分。群れで生活する仲間もいるから、きっとどこかの山奥にはまだいるはずです。皆、わたしみたいに人の言葉はわかるし、話せるから昔から狙われている。だから、上手く隠れて暮らしているのです」  鳥、偽尾白はそう応えるとふう、と息をついた。  十分な明かりがないせいか、それとも羽毛のせいか顔の表情はよくわからないが、あまり元気な様子には見えない。 「……もしかして、まだその怪我が治っていないのか?」 「…………」  大城の問いには答えず、鳥はその場に座り込んだ。  目を閉じた姿からは、あまり語りたくないという意思が見えるようだった。 「連中は、お前の血中にBBO菌を見つけたんだな。それで、研究に応用しようとした。だが、まだわからない事がある。生物兵器テロに対抗するための策を研究するためのラボが、なぜこんな犯罪に手を染めるようになったのか……わからんな」 「刑事さん」
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