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「君って、ずっとここにいるの?」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「君はここに住んでるのって意味」
「プライベートなことは、お答えできないので……」
さっきから近い。
パーソナルスペースもくそもない……。
「ねぇ、このまま君を抱いてもいい?」
最悪の誘い文句だ。
嫌だ。あの男もいるし、ここでやられるのなんて死んでもごめんだ。
「今、食事の途中なので」
「食べてるのは、遙だけだよ」
……ダメだ。普通に逃げてるだけじゃ無理かもしれない。
どこか妥協して何か捨てるしかない。
「柚季ちゃん、見られるのが恥ずかしい?」
「……ええ。少し。こういうことは初めてなので」
「へぇ、初々しくて俺大好きだな、そういうの。顔も真っ赤にしちゃって目もうるんできてる。変わった赤い眼だな。吸いこまれそう」
「……っ」
なんでもいいから早く解放されたい。
この男だけなら、普通に大人しくしてるが、今回はそうはいかない。
「蒼樹さん、お友達はよろしいのですか?」
「遙のことなら気にしなくてもいいよ」
気にするわ、阿呆。
「ンッ」
「フッ、かーわいい」
こいつっ。
首筋をなめられ、不意打ちの出来事にびっくりする。
「ねぇ、柚季ちゃん。キスしたい」
「……」
ぎらついた欲の塊のような眼に見つめられ、とうとう逃げられなくなる。
キス、許すしかないのか?
「蒼樹さん、恥ずかしいから……彼から隠して」
精一杯の願いとして、そっと耳元で懇願する。
じゃなきゃ最悪の恥だ。
「……っ。君、ほんといいね」
「……んっ」
急に覆いかぶさられ、頭を強く打つ。
そして勢いよく飛び込んできた唇を受け止める。
あぁ、最悪だ。
なんつー客に指名されたんだろう。
「……っはぁ。着物脱がすのってめちゃくちゃそそられるね」
ただの変態だろ、この男……。
「このまま一気に俺のもんにしてみたい」
ただの狼。
あぁ、このままやられるのだろうか……。
薄く目を閉じ半分諦めがはいってきて、力を抜いて行く。
「フッ、大人しいね。それじゃ、遠慮なく」
「おい」
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