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「私は、そんなお高くとまった位置でずっと眺めているのは性に合わないんです。私は他の歴代の高嶺の華よりも皆さんと近い場所にいたいの。まぁ、それなりのお金は必要かもしれませんが」
10万以上ならある程度は相手をする。
それが私が高嶺の位置でありながら、自由できる条件。
まぁ、私の気分と相手にもよるが、基本的に金が入れば我慢はする。
「お前は、金さえもらえればこんな酒のみだけの相手でもいくらでも相手するのか」
「しますよ。私にできることならなんでも致します。それが仕事ですもの」
「……そうか」
なんだ、この人。
さっきまで黙りこくってたのに急に色々聞き始めた。
蒼樹は拗ねて窓を見始めてる。
なんか、変な客だ。ほんと……
……………………
………………
…………
結局追加で用意した4本も余裕で飲み切った矢嶋は、満足したように食事も残すことなく食べ終えて席をたった。
「元晴、帰るぞ」
「え?かえるの?」
「なんだ」
「いや、別に……」
本当に食べて呑みに来ただけなんだ。
滅多にこないのにね、こんな客。
「ありがとうございました。またよければお越しください」
「柚季ちゃん、今度はもっといいことしようね?」
語尾にハートが見えて、思わず眉間に皺が寄りそうになるのを必死に抑える。
「柚季」
「え?はい」
急に矢嶋に名を呼ばれて驚く。
さっきまでお前だったのに。
今の、何。
「柚季、また酒の相手をしろ」
「……えぇ、いつでもお待ちしております」
「またくる」
そう言葉を残して部屋を出る。
「またの、お越しを心待ちに柚季は……待っております?」
……なんなんだ。
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