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仕事が終わり、布団にワイシャツ1枚で転がる。 宗くんはそう言葉をかけて、着物を畳んでいる。 「お疲れ様です。弓弦さん」 「ほんと疲れたー!」 とんだ笊のあの男と一緒に飲み脳内は地味にほろよい状態だ。 自分でいうのも何だが、自分は酒に強い方だと思ったが、あの男には負ける。 「弓弦、入るわよ」 ベッドで寝転がってリラックスをしていると、襖を開けて女が入ってくる。 「樹さん、お疲れ様です」 宗くんが挨拶をして、入ってきた女に微笑みかける いや、性格には女の格好をした男だ。 親しみやすいようにこんな格好でこんな口調だが、普通に男だそうだ。 まぁ、バイらしいが。 そんなかの……彼は、樹。 この店のオーナーで私を、拾ってくれた人だ。 「弓弦、宗介、今日もお疲れ様」 ……今日はエロ親父に散々相手させられた後に、あの濃い2人だもんな。 しかし蒼樹とはもう相手したくないわ。 アイツ、結構鬱陶しい。 「樹、あの2人なんなの?」 「さぁ、新規のお客様としか。でも次もよろしくお願いしますて言われたわよ」 「最悪だ……」 「そう?2人ともイケメンよねー。特にあの金髪。私ああいう子大好き」 蒼樹が好みなのか。 いっそ蒼樹を手懐けてもらえると、こちらとしては相手しなくて済むのでいいんだけど。 「でも、2人で来るなんてどんな客かと思ったけど」 「普通に飲んで食べて帰っていった」 「珍しいわね。アンタが吉原1になってからそういう客はめっきり減ったんだけどねぇ」 求めるものが変わったからでしょ。 「でも食べることに夢中だったのは黒髪の方で、金髪は完璧に私とそういう関係になろうとしてたわよ。あの黒髪に見られながらとか死んでも御免だわ」 あの男が助けてくれなかったらどうなったことか……。 「そう。まぁ、それ相応の金は入れてくれるだろうし、頑張りなさい」 「言われなくてもそうするよ。とにかく、私は寝る」 「ええ、お休み。弓弦。宗介、あとはよろしく」 「わかりました」 そういって部屋を出て行く樹を見送って、私は目を閉じる よほど疲れたのか、意識はすぐに薄れて行った。
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