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「君の肌は本当にきれいだね、柚季」 「あら、煽てても何も出ないわよ?」 「そんなんじゃないよ。本当のことさ」 耳にタコができるくらい何人からも浴びせられる言葉にそろそろ飽きてくる。 他にいうことないのか。 「今日はえらく色っぽいね。落ち着かないようだけど、何かあるの?」 「え?そう見えます?」 「あぁ、なんだかソワソワしてる」 ……あの蒼樹が昨日に続けてくるというのだ。 そりゃ落ち着かない。 何されるかわかったもんじゃない。 「フッ。別に何もないわ。ただ貴方が、今日はどんな愛をくれるのか、気になっただけ」 自分でいってて虫唾が走るわ。 これで落ちる男なんて、どうかしてる。 「はは、君は本当に愛に飢えた子だ」 結婚指輪をはめた男の指が頬に触れる。 ちょっと、指輪外し忘れてるけど? それに何か勘違いしてるよ。 「ねぇ、本当の妻がいるのに、ここにいていいの?」 「え?あぁ。すまない」 慌てて指輪を外そうとする手を止めて、手を掴む。 ほんと、裏切りよね。 妻がいるのに、ここにいるなんて。 家で大人しく家事をしてご飯を作って待ってる貴方の妻に申し訳ないよ。 でも、ごめんなさい。 私は、これが仕事なの。 その指輪のはめられた手を自分に近づけて、そっとその指に唇を寄せる。 リップ音と共に彼の目を見つめる。 なるべく誘うように、そして卑猥に。 「……っ」 でも、私は貴方の心や愛には興味がない。 私が興味あるのは、貴方たち金持ちのその貢ぎ金。 私が飢えてるのは、 「いいわ、外さなくて。その方がスリルがあるじゃない……?」 「君は……本当に最高だな」 金よ。
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