838人が本棚に入れています
本棚に追加
「みんな嘘だらけの私にはまっていく。私はその分お金が入る。いい取引でしょ?金が手に入るならいくらでも身体なんて売ってやる。こんな身体でも喜ぶ客はいるんだし。どうせまともに働こうと世の中にでても私は認められない存在だもの。何をしたってお金が入ればそれでいい」
面接に行けば、ぞんざいに扱われる。
まるで私の過去をすべて知り尽くしたように。
何も知らないくせに。
一度雇っても、私の生活を知った途端に、手のひらを返したように私を捨てる。
世間体だけを気にして。
この腐った世の中が、私は大嫌いだ。
「それが、君の本性」
「そう。びっくりした?私は、高嶺の華なんて綺麗な人間じゃない。金のためなら自分さえも偽っていくらでも身体を差しだす女だ」
少しの間、沈黙が訪れる。
その沈黙を破ったのは、彼の高らかな笑い声だった。
「くッあははははははははっ」
「……」
「君は、ほんと最っ高だね……。遙の言った通り」
「遙?矢嶋さんがどうかした?」
なぜ急にあの男がでてくるんだ。
「アイツが言ったんだよ、昨日。君はきっと猫をかぶってるって、ね」
「あの人が……?」
驚いた。
だからあの人昨日……
【おい、酒もってこい】
そうやってこの人との間に入ったのか。
私が嫌だとわかったから……。
ふーん、そんな見る目のある人間には見えなかったけど。
「さすが俺の友達だよ。鎌かけたら君、あっさり猫とっちゃうから」
いっぱい食わされたってわけか。
「……私のこと幻滅した?」
「いや、寧ろ俺は積極的な貪欲な女の方が好きだよ。柚季ちゃんがほしい」
どのみちこうなるわけね。
諦めるしかないのか。
「払った総額分くらいは、楽しませてよ」
「……いいわ」
腕を彼の首元に回し、顔を近づける。
「貴方がここに来たこと、後悔させてあげる」
ニヤリと笑うと、彼は満足そうに笑って、私の頬に手を添える。
そして、そっと唇を寄せる。
思った以上に長い濃い時間のなか、彼のささやきが耳に残る。
「君はまるで麻薬だな」
胸糞悪いセリフだ。
そう考えながら、時間ギリギリまで蒼樹の好きにされた。
最初のコメントを投稿しよう!