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吉原。
都会の街の端くれにある男が女を求めて集まる遊楽町。
そこは所謂、遊女……身体を売る女や男に媚を売る女がゴロゴロいる場所だ。
キャバクラ、風俗、パブ、なんでもある。
その町には、ランクがあり吉原1の女は指名率や人気、金を稼ぐ相場もすごい女が選ばれる。
その女は高嶺の華と呼ばれ、最高級の女として扱われる。
でも、実際最高級なんてただの肩書きで、本当の高嶺の華なんてそんな綺麗なもんじゃない。
ただ、金がいる。
そのためだけに必死に儲けて、金を手に入れる為だけになんでもする。
それが、たとえ……
身体を売る仕事でも。
「あぁ、綺麗だよ、柚季」
気持ち悪い、笑み。
卑猥に私の腰を撫でる皺だらけの手。
「柚季、いい加減私のものにならないか。私なら君のことを死ぬまで養ってやれる」
先にいくのがわかりきってる定年前の老いぼれが何をいってんだか……。
「君が他の男にも抱かれていることを思うと私は嫉妬でいっぱいだ。君は美しい。吉原でどこを探しても、お前にかなう女はいない。本当は高嶺の華という肩書では言い表せないくらいだよ」
虫唾がはしる
「あなたは私のことを買いかぶりすぎだわ。私は、別にそんなにいい女じゃないもの」
「何をいっている。柚季は一番の女だ。きめ細かな肌に上気させた頬、目だけで落とせるくらいの澄んだルビーのような瞳。君の価値はそんな安いものじゃない」
「ふふッ、ずいぶんと上げるのが上手ね」
男が私の肩にかかる着物をずらしていく。
鎖骨から首筋、そして頬にと撫でるように触れる手。
そして唇に落とされる彼の唇。
彼の膝に乗っている私の腰を引き寄せて甘くささやく。
「柚季を、私のものにしたい」
「……フッ。うれしいわ。でもごめんなさい。私は、今誰かのものになるつもりはないの」
養ってもらっては困る。
私だけの生活ならそれでいいが、それ以外のことがある。
私には、金がいる。
「ただ……私はあなたのような人は好きよ?」
そう。貴方のような、私のような腹黒い女にほいほい金をつぎ込んでくれるお金持ちは。
「私もだ、愛している」
そういい、押し倒される私の身体。
あぁ、嬉しくない愛のささやき。
金がなければ、絶対にこんな男とはこんなことしないのにね。
くだらない世の中だ。
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