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「はぁ……」 がらんと殺風景な和室で窓枠に手をかけて外を眺め息を吐く。 手には、先ほどまで相手をしていた親父からの贈り物。 高いルビーのネックレス。 着物は早々に脱ぎ捨てて、今は上の服はワイシャツ1枚。 楽で仕方がない。 仕事であれ、着物を着るのはつかれる。 「弓弦さん」 襖から声が聞こえて、目だけそちらに向ける。 「どーぞ」 「失礼します」 襖を開けて入ってくるのは、まだ未成年だと言われてもおかしくない甘いマスクの男前。かっちりスーツを着こなして、少し癖気な茶髪が歩くたびにサラリと揺れる。 堀宗介。 私の働く吉原の店「高嶺」で共に働く男。 私のお世話係だ。 もっと普通の仕事できたでしょうに……。 「もう、弓弦さん。またそんな格好して」 「どうせ仕事が入れば、着物着るんだし。脱ぎやすいのがいいの」 「そうですけど……ほんと"柚季"とのギャップが激しいですね」 仕事中は”柚季”と名乗って仕事してる。 実際は橘弓弦ていう名前。よく口頭だけで伝えると男と間違えられる。 それに、柚季は完全に猫をかぶっているから、仕事がない私との性格が真逆なのは当たり前だ。 本当は、高嶺の華なんて地位、似合わないくらい女らしくない腹黒い女だよ。 「それより弓弦さん、次の仕事ですよ。2人いらしてます。友人同士だそうで、結構な額を出してきたのでお受けしましたがいいですか?」 「宗くん、それいくら?」 「10万」 「ふーん。いいよ、やる」 立ち上がり、ワイシャツのボタンに手をかける。 宗くんは手際よく、次の着物を選んで私に着つけていった。
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