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「失礼します。柚季をお連れしました」 そう襖を開けて入っていく宗くんに続いて私も入っていく。 「柚季と申します。今夜は、よろしくお願いします」 営業スマイルという名の微笑みを見せて第一印象を良く見せる。 「へぇ、想像以上に美人だな。そう思わねぇ?遙」 「……」 随分若い二人だな。 一人は、黒い高級そうなスーツを着て、髪型は黒髪をワックスでうまくまとめている。 無表情で、眉ひとつ動かない。 あれでにらまれたら、すごいだろうな。 もう一人はニコニコ笑う金髪頭のいかにもチャラそうな男。 横髪は後ろにまとめられている。 でも、この男の眼はちょっと嫌いだ。 「まぁまぁ、柚季ちゃんだっけ?こっちにおいでよ」 「はぁ……」 部屋に入り、彼らの目の前に座る。 「あの、初めてのお客様ですよね?今日はどういったことを?」 「そうだなぁ、俺たちと「酒」遙?」 ニヤニヤと笑うチャラ男の言葉をさえぎって、無表情の男が低い心地いい声でそう答えた。 意外な答えだけど。 「お酒ですか?」 「あぁ、酒に付き合ってくれるだけでいい」 珍しい要望だな。滅多にそんな人いないのに 「えー?遙。ちょっとそれ勿体なくない?」 「別にそうは思わない」 「こんなにいい女なのに?」 「俺はいい。そんなに気に入ったならお前が手をだせばいい」 ちょっとちょっと、見られながらやられる趣味はないっつーの。 こいつ、何考えてるんだ。 「おい、お前」 「はい」 「酒と飯。用意できるのか?」 「勿論です。すぐ用意させますね」 そういって宗くんに客の要望を伝えてまたすぐに部屋に戻ると、2人は静かに待っていた。 会話一つない。 本当に友達同士か?
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