838人が本棚に入れています
本棚に追加
地獄だ。
「ねぇ、柚季ちゃん。君ってほんと美人だね。いくつ?」
「22です」
「へぇ、若い。俺たちなんか、もうあと2年で三十路なんだよねぇ」
最悪だ。
料理と酒が用意出来てからというもの、私に喋りかけるのはさっきから隣いるチャラ男で、目の前にいる男は一言も発しない。
黙って酒を飲んで、ごはんを食べている。
名前を聞けば、このチャラ男は蒼樹元晴といい、目の前の男は矢嶋遙というらしい。
「蒼樹さんは、ごはんを召し上がらないんですか?ここの料理、私がいうのもなんですが、とても美味しいですよ?」
「うーん。あまりお腹すいてないんだァ。そこにいる遙にいい女紹介しようとおもって連れてきたんだけど、アイツ花より団子みたいなやつだから」
紹介って、連れてくるところ間違えてるだろ。
もっとまともな女紹介してやれ。
「それにほら、君って吉原で有名だからさ」
「えっと、あの」
こいつ、扱いづらいな。
どうも丸め込まれてくれない。
コイツは団子より花か。
座る私の上に膝立ちで乗られ顎を掴まれる。
遙と呼ばれる彼は物怖じしないし、興味がなさそうに普通に酒を煽っている。
「あ、蒼樹さん?」
「ここってこういう事もできるよね?」
耳元でささやかれ、なめられる。
気持ち悪い。
「ちょっと怯えてる?」
いや、怯えてるというより、気持ち悪くて鳥肌が立ってる。
「フッ、震えちゃってかわいいなぁ」
心外だ……。
最初のコメントを投稿しよう!