殺戮という名の日常

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 シャワー室から出て、綺麗に畳んで積まれたタオルを適当に取ると身体の水分を乱暴に拭き取って横にこちらも綺麗に畳まれた服を取って着ていく。白いTシャツに薄い緑色のカーゴパンツ。支給された物で選択肢がないとはいえ、おおよそ女の子らしい服装ではないが香織は気にしない。 「あー、またそんな乱暴に髪拭いて。ほら、座って」  一方で、漆黒の髪をしっかりととかし頭の横でツインテールに結び終え、香織と同じ服装に着替えた少女が香織のそんな行動に不満を示しながら香織の背中側に回り込むと先程まで少女が座っていた鏡の前に座らせる。 「香織は女の子なんだから、こういうのはちゃんとしないとダメだよ?」  少女は香織とは対照的な優しい手つきで香織の髪の水分を拭き取っていく。 「あたしは別に」 「ナオみたいに長くないし?」  香織が言おうとした言葉を先取りして口にする少女――ナオ。香織は小さく頷いてそれに答える。 「こういう事は毎日やるのが大切なの。取り返し付かなくなってからじゃ遅いんだから。昨日も言ったでしょ」  毎度のやりとりをしながらもそれを楽しんでいるようなナオ。香織の髪の水分を一通り拭き取り終えると櫛を使って髪をとき始める。  香織はされるがままにされながら鏡に映るナオを見る。ナオの頭の動きに合わせて揺れる漆黒色のツインテールに香織はまた少し憂鬱を覚えた。
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