殺戮という名の日常

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 食堂で簡素な食事を手早く済ませた香織とナオは部屋には戻らずにそのまま校舎へと続く渡り廊下へと進み教室に入った。寮から校舎に伸びる渡り廊下を渡り終えて最初の教室が香織達の教室がある。一辺が十メートル近くのほぼ正方形の部屋にはあるのは昔ながらの机に教卓、そして黒板だけというシンプルな教室である。規則的に並べられた机が教室の後ろにいくにつれて大きくなっている事以外を除けば特徴的な物は何もない部屋である。  香織は既に教室にいた香織よりも一回り小さな子らの横を素通りして教室後方に向かう。 「おはよう」 「うん、おはよー」  後ろに続こうとしたナオの行く手を遮り挨拶をする男の子にナオは足を止めて挨拶を返すが香織はお構いなしに足を進める。その足取りはまるで障害物を避けているように躊躇がなく迷いもない。そんな香織の態度も、慣れている男の子は気にしていないようでナオにニコっと笑ってから後から入って来た子らの方に挨拶に向かって行った。視線でその動きを追っていたナオが教室の後方に視線を戻すと香織は既に自分の席に座り終えていた。  キーンコーンカーンコーン  注意しようと足を進めたナオの行動を朝礼が始まる事を知らせるチャイムが遮る。教室にいた子らが慌てて席に座るのに流されるようにナオも自分の席に座った。やがて閉じられていた教室のドアが開き、女性教師が入ってくる。 「起立」  女性教師が教壇に立つのに合わせて号令がかかり皆が立ち上がる。 「礼」  再びの号令に合わせて皆が頭を下げる。綺麗に揃ったその動きはある種の様式美を感じさせる物だった。
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