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しかし、まさか命の恩人にタメ語というわけにもいくまい。
それが、本人の了解であっても。
まあ、ふたりきりなら対等に話してもいいが、他人がいるときは、俺の風評が悪くなる可能性があるからな。
なんだあいつ……上将軍に生意気な言葉づかいしやがって……みたいな。
ならせめて、一人称だけは普段つかってるものにしよう。
僕、もけっこう使うけど、やっぱり、俺、のほうが他人からすれば距離が近い気がするだろ。
「俺はユウヤです。
助けてくださって、ありがとうございます」
「いやっ、別にいいんだ」
かるく返事をすると、クロウはニヤリと笑う。
いやな予感がした。
「世話した分は働いて返してもらうから」
予感的中─────できれば外れてほしかった。
「お前の身分は騎士見習いだ。
この部屋は自由に使っていいぞ。
仕事は明日からだから、今日まではゆっくり休め」
クロウは、今日までは、を強調して言う。
俺は苦笑いを浮かべ、了解しましたと返事する。
「じゃあ明日の10時に迎えにくるから、それまでに起きとけよ」
「はい」
「じゃあな」
クロウは部屋を出ていった。
それで、ふうっと息を吐く俺とアヤネ。
緊張が抜けたみたいだ。
「それじゃあ、私も。
ユウヤくんが目覚めたから、もう仕事はないし、じゃあね」
じゃあね、と言いかけて、呼び止める。
「すまんが、トイレまでの道を教えてくれんか?」
アヤネは快諾してくれた。
まあ、俺としてはアヤネが今持っているもので、世話してくれてもいいんだけど。
いや、俺、人いると小便できなかったんだった。
あー、あれか。
寝ている間、天国だったんだな、俺のイチモ……
バチコーン!←ビンタ
「ぶべぇっ!?」
アヤネにビンタされる。
「な、何故にビンタするだ?」
「今、変な想像してたでしょ」
疑問文ではなかった。
もはや、決定している様子でした。
しかし、変な想像してたのは事実なため、否定はしない。
いやー、女の勘って恐ろしいっ!
俺はそう思いつつ、アヤネについていった。
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