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俺はヘラヘラとしながら、アヤネと場所を入れ替えた。
自然体だったはずなので、アヤネは気づかないはず。
つまり、ドアの方へ。
幸いにも魔剣──アナザーワールド(AW)があったので、それを居合い抜きするようにドアに向けて構えた。
驚くアヤネに、少し静かに。と声をかける。
巨大な気配はドアの目の前で止まった。
ゴクリ。
唾を飲む。
これほどの気配はあのリンドヴルムの王、レイヴァルからしか感じたことがない。
キィ……とドアが開きかけた。
ノックがない。
つまり敵!
居合いをしそうになるが、思い止まる。
もしこの城の人だったら───
途中まで、抜きかけて止まった。
そして、ドアの向こうからは屈託のない笑みが現れた。
「よう。
なかなか良かったぜ。
その警戒心と判断力。
アーツの扱いはまだまだみたいだけどな」
アーツ………?
そんな疑問は浮き出たが、俺はその人の笑顔に、すっかりと戦意を喪失した。
警戒しろと囁くもうひとりの自分────つまるところ、理性に従って最低限の警戒は残したものの、この人は敵じゃないと本能が理解した。
「まー、なにはともあれ、無事に目が覚めてよかったな」
「はい。
もしかして、貴方が僕を助けてくれたんですか?」
まさか、と考えていた。
俺と同じ黒髪、黒目、黒衣…………そして、この圧倒的な存在感…………その他もろもろ含め、間違いない。
「まあな。
それと、堅苦しい敬語はなしでいいぞ。俺の名はクロウだ」
またもや予想的中。
やはり、この人がクロウか。
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