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これはいったいどうした事だろうか?
疑問は解消される前に浜ちゃんは起床し、安心できる場所への移動が再開された。
昼まで歩いたところで、リンドヴルムが見えてきた。
歩きながら話す俺と浜ちゃん。
懐かしい高校の話題や、共通の趣味の話題……この世界での近況……
この世界での呼称のことなど。
渾名では不審に思われるので、互いに名前で呼びあう事に決定した。
日が沈みかける頃にリンドヴルムに到着し、宿屋に入る。
その後、一般開放された豪華な装飾の施された風呂に入る事になった。
湯船に浸かりながら、深く息を吐く。
我ながらおっさんぽいなぁ……と思う。
「……あ」
湯船に浸かってしばらくして、不意にあることに気づいた。
「どうした?」
訊いてくる浜ちゃん──もといタクミに言ってみる。
「いや……これたまたまかも知れないけど……
俺とタクミと三橋さん……今のところ、この3人がこの世界で確認されてるわけじゃんか」
「うん」
「タクミはこの世界に来てから、比較的早く魔法を覚えたって言ったね。
それが、俺の場合はアーツになる。
三橋さん……アヤネって呼んでるんだけど、アヤネはこの世界に来た直後にアビリティを開花させた。
……偶然かもしれないけど、各々の特別な才能が覚醒している」
タクミは相槌を打った。
「あー、確かに。
言われてみればそうだね」
俺は真面目な表情を崩して、湯船に深く浸かった。
「いやー、この異世界補正で他の連中も生き残ってる希望が出てきたなぁ」
「セリフくっさ」
今のセリフ…なんか恥ずかしくね?
そう思った瞬間にタクミにツッコミを入れられた。
「うるせー。
確かに俺も、希望が出てきたとかくさいと思ったけども!
いい場面なんだからさあ……」
タクミもまた、湯船に深く浸かった。
「でも……確かにそうだ。
俺たち以外のクラスメイトが生き残ってる希望が出てきたね」
俺たちは風呂をあがり、宿屋の布団に潜った。
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