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「でも、それを言う勇気はなくて………結局、どこまでも中途半端な男になってしまった。
ユウヤと再会して、喧嘩しようとしたのも、今思ってみればたんなる八つ当たりでしかない。
……それでも。
それでも、俺はセラが好きだ。
諦める事はできない。
だけど、セラにとって俺と過ごした時間…数ヵ月より………!
ユウヤとの2週間のほうが大きいんだ!!
なんで……どうして……?
俺のほうがずっと一緒にいるのに……
俺のほうがセラの事を想っているのに……
俺のほうがセラを幸せにできるのに………!
そんな事を考える自分が嫌で……
だけど、セラを諦める事はできない。
こんな……どうしようもない、負の循環に陥ってしまっている……俺はどうすればいいんだ………!?」
タクミの独白を聞き終えて、俺はため息を吐いてから答えた。
「俺が知るか」
だいたい、今日1日は歩き続けたせいで眠いのだ。俺は。
「そう、だよな……俺は…」
だがしかし、こんな印象の悪いセリフを残して寝るのはさすがに悪いと思い、タクミの言葉を遮って俺は再び口を開いた。
「俺から答え聞いても意味ないだろ。
自分で答えに辿り着くのと、他人から教えてもらうのとじゃ、かなり意味が違ってくる。
それに、俺から聞いた答えが必ずしも正解だとは限らない。
つーか、不正解だろ。
自分の悩みは自分で解決した方がいい。
自分の出した答えこそが正解だろ」
やっべー………
自分で言ってて気づいた。
これ名言じゃね?
俺史上に残る名言じゃね?
月明かりが射し込む部屋の中で、タクミが笑った気がした。
「そうだね。
他人にもらった答えじゃ意味がない。
自分で出した答えだからこそ、どんな結果でも納得できる……」
タクミは、俺の言葉の意味を正確に捉えていたようだ。
開きかけていた口を閉じる。
ここから先は、いらないお世話だろう。
「おやすみ」
タクミのセリフに、同じように返す。
そして、今度こそ眠りについた。
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