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その姿を目にした瞬間……これまで歴史として知識にあった2週間の記録が、経験としての2週間の記憶に変化した。
「ああ………」
何故……俺はこんなにも愛しい人を忘れていたんだ……
「……セラ」
「ユウ…ヤ……?」
視覚、聴覚から入ってくる情報を正しく読み取れない。
感情が…ひとりで先走っている。
俺はセラに手を差しのべた。
ほとんど無意識に……本能的にセラを求めていた。
しかし、その手は振り払われた。
何が起こったのか、一瞬わからなかった。
振り払われた手に籠る少しの痛みが、幾分か俺を冷静にさせた。
それでも、普段とはほど遠い状態だった。
「セラ……なんで……?」
考えればわかること。
しかし、俺は考える事を放棄していた。
「なんで…って……
私だって……なんで………なんでなの?」
「セラ。
ユウヤはアルテアマナ平原で目覚めてから、これまでセラについての記憶を失っていたんだよ」
タクミが説明する。
そうだ……俺は何故そのことを言わなかった?
「なんで……今さらそんな事……」
セラは涙を流し、俯いた。
しかし、すぐに涙を拭い顔を上げる。
その表情には鬼気迫るものがあった。
ああ、俺はこの顔を知っている。
この顔は、俺を敵視している者の顔だ。
その直感を裏付けるように、セラの言葉は俺を射抜いた。
「私、知ってるよ……ユウヤ。
あなたはすでに魔人ふたりを葬った。
あのふたりはリンドヴルムの将だった。
だから魔人ふたりを討ったあなたは──────」
予想した。
働かない脳みそから次の言葉を。
そして、心が痛んだ。
それを言われた自分と、それを言ったセラの心境を察して。
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