241人が本棚に入れています
本棚に追加
左手でセラを逃さないように掴まえ、陰の魔力で形成された鎖で捕縛する。
鎖はセラの体に巻き付き、セラの持つ魔力はグングン俺に送られてくる。
だが少し、俺の読みは甘かった。
セラは魔力を爆発的に高めた。
それにより、魔力の鎖は瞬間的に吸収できる限界を越えて壊れ散る。
捕縛を解いたセラは掌を俺の胸に当てた。
────まずい
思考と共に飛び退こうとするが、セラのもう片方の手でガッチリと掴まれていて振りほどく前にすでに魔法は唱えられていた。
「サンダーブラスト!」
俺は吹き飛ばされていた。
体のあちこちに激痛が走っている。
どうやら皮膚はほとんど炭化しているようだ。
それでも……というか、ゼロ距離であの魔法をもらって生きていられるのはひとえにヴァンパイア化していたおかげだ。
思考はできるが、体は動かない。
───まずい、まずい!まずい!!
「クリムゾンクライシス」
セラの声で、俺の視界は紅に構築されていった。
球状に見えるこれの内側は魔力の奔流でまともに動けない。
たとえ、俺が万全でも打つ手はかなり限られるだろう。
加えて、今はこの状態………助かる可能性は……ごくわずかだ。
だがそれでも……諦めない!
諦めるのは終わってからでも遅くない。
死ぬまで希望を持ち続けろ!
それが、俺がセラに教えた事だから。
だから、ここで生存の道を探さないのはありえないんだ!
ありったけの意志を以て体に力を入れた。
その瞬間だった。
紅の世界が、白に染まった。
最初のコメントを投稿しよう!