241人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の中にあるヴァンパイアの力──そのすべてが今、解き放たれる。
あらゆるダメージをなかった事にする治癒力。
いくら血を流そうとも尽きない生命力。
ほぼすべての攻撃を和らげる外皮。
それらを含む、俺をヴァンパイアたらしめるすべての要素が、俺という枷から解き放たれる。
正確に表現するならば、それらすべての力が今、消費される。
崩壊を始めていた紅の世界──クリムゾンクライシスと唱えられた魔法は、解放されたヴァンパイアの力により消失する。
瀕死だった俺の肉体は解放されたヴァンパイアの治癒力により全回復した。
クリムゾンクライシスから脱した俺は着地し、セラに向き直った。
クリムゾンクライシス……よほどのとっておきだったのか、それを破られてセラの顔は驚愕を隠しきれていなかった。
俺はセラに語りかける。
「セラ………」
セラは黙ってこっちを向いた。
「俺は…お前のことが好きだ。愛してる。
アルテアマナ平原で目覚めた時に感じていた違和感に目を向けていれば……と、俺は今久しぶりに後悔してる」
解放されて、本来の形を取り戻したアビリティ。
「だから、俺は今ここでお前を、お前自身に向き合わせる。
余計なお世話かも知れんが、今のお前は自分の心から逃げている。
自分の本心に向き合うんだ…セラ。
俺は…お前が自分の本心と向き合う事を誓う」
そのひとつは『誓い』。
『誓約』と言い換えてもいい。
俺はここで『誓約』した。
この誓約を達成すれば、俺の力は一時的にはね上がる。
「そんな……私、は……………」
俺の言葉を聞いたセラは……すでに自分と向き合おうとしていた。
知っている………セラは芯の強い娘だ。
だから、指摘すれば素直に、無意識に改善できる。
誓約達成───────
最初のコメントを投稿しよう!