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「でも……それでも私、はリンドヴルムのセラとしてあなたを殺さなきゃいけない!」
セラは己の本心と向き合いながらも、自分を律し、リンドヴルムのセラの役目を全うしようとする。
だから次はセラを縛る、リンドヴルムのセラ、という枷を壊さなきゃいけない。
……………とは言っても、こればかりは俺はどうしようもない。
自分を縛る枷を壊せるのは自分だけだからだ。
手伝う事はできるが、結局のところ、最後の最後に義務感や責任感、罪悪感という枷を壊せるのは自分だけだ。
セラはもう、自分の本心と向き合っている。
普通ならこれで、枷は壊れるはずなんだが……
アルテアマナ平原で俺においていかれた、という悲しみ……
これまでリンドヴルムのセラとして働いてきた思い出……
それらすべてを総じたものが、本心を上回っている……という事なんだろう。
だが、その差は紙一重のはずだ。
現にセラの瞳に、俺を殺すという強い意志はなく、迷いが見てとれる。
そうだろう、そうだろう………本心とは───欲望とは抗い難いものだ。
自分を大切にする。
自分の意志を大切にする。
言い換えれば、自分の欲望に忠実になる、ということになる。
ただ、自己犠牲の精神で言えば、欲望に忠実になる、の方に分がある。
例えば、今、俺は自分の欲望に忠実になっている。
俺の欲望は、セラが本心のままに動くようになること。
その欲望達成のためならば、俺は犠牲になってもいいと思っている…………
この感情に自分でも驚いている。
俺は基本的に、自分を大切にする人間だ。
自己犠牲の精神などごくわずか。
それなのに…今はセラのために命を投げ出す覚悟がある。
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