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「ええと、ではまず初めに自己紹介をしたいと思いまーす」
パチパチパチと、後の二人の男が拍手して盛り上げる。一人は色白でややぽっちゃり型、もう一人は黒ぶちメガネをかけた神経質そうな男。
一緒に拍手する綾香は、早くも長身イケメンに目をつけたらしく、彼のほうばかり見ている。
男三人の自己紹介が終わると、長身イケメンが
「では、女性軍の自己紹介をお願いします。まずはそちらの彼女から」と、美麗に向かって言った。
本命をあとに残しておく、これもよくあるパターンだわと、彼女は納得する。
「はじめまして、嶋谷美麗です。先月二十四才になりました。婦人服の販売をしています」
「ミレイちゃんか、素敵な名前だね。どんな字を書くの?」
黒ぶちメガネが、彼女の一番イヤな質問をしてきた。
「あまり言いたくないんですけど、『美しい』に『麗しい』と書きます」
子供のころから美麗は、自分の名前を説明する瞬間がイヤで仕方なかった。亡くなった両親は美人になることを願ってつけたらしいが、どう見ても名前負けしている、なぜもっと地味な名前をつけてくれなかったのかと、自己紹介のたびに親を恨んできた。
「そっか、君にぴったりの名前だね」
黒ぶちメガネがお世辞ともイヤミともとれる返事をした。その横で色白ぽっちゃりは露骨にプフッと吹き出した。長身イケメンは全く表情を変えずに
「では、こちらの彼女、よろしく」と、さっさと話題の中心を綾香に振った。
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