<1>合コンがキライ

6/8
前へ
/47ページ
次へ
 おそらく彼はみんなが気づかないうちに、綾香に自分のメアドか電話番号を渡しているのだろうと、美麗には察しがついた。  長身イケメンと色白ぽっちゃりが綾香を挟んで歩き出した。とっくに勝負はついているのに、と色白ぽっちゃりに同情する美麗に、黒ぶちメガネが小声で話しかけてきた。 「ねえ、美麗ちゃん。俺、どうしても美麗ちゃんのメアドを知りたいんだ。だめかな?」 「本当?」  彼女は自分の耳を疑った。仕事以外で男の人にメアドを聞かれたことは、今まで一度もなかったからだ。 「本当だよ。電話番号でもいいよ。今晩連絡するから」  予想外の展開に、ついさっきまで疎外感でいっぱいだった彼女の心は、まるで霧が晴れるように明るくなった。 ――彼があたしの名前をほめてくれたり、話しかけてくれたりしたのは、イヤミや同情ではなく、本当にあたしに好意をもってくれたからなんだ。 「うん、いいよ」  彼女は喜んでメアドを交換した。  駅の改札口で、美麗と綾香は手を振って男達と別れた。綾香は長身イケメンに、美麗は黒ぶちメガネにむかってそれぞれ手を振る。  ひとりカヤの外に置かれた色白ぽっちゃりを見て、美麗はちょっといい気味だと思った。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加