10人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ばさりと紙袋をひっくり返して、リビングに見合い写真と釣り書きをまき散らした。
この中から一枚を選ぶ。
それだけのことだ。
「…のんちゃん、僕を捨てる気?」
まき散らされたものの正体に気が付いたのだろう。
眉をひそめてゆきが問うた。
「捨てられたいか?」
「捨てるならちゃんと壊してからにしてくれよ」
「壊してから捨てたら、佳也子どころか、俺はなりにも刺されるな」
親の名前を出してくつくつと笑ったら、ため息をついたゆきがめんどくさそうにテーブルに着いた。
仕方なさそうに口に食べ物を運ぶ。
ほら。
何処にもなじめずに、こうして俺だけにすがる生き物をどうして捨てられる?
俺がここにいることを証明してくれるってのに。
「ゆき、捨てられたいか?」
改めて問うたら、うつむいてふるふると首を横に振った。
「でも、のんちゃんは…どこへでも行けるから」
捨てられることがあっても仕方ない…口の中でそうつぶやく。
どうだ、この愛しさは。
まだ青くて育ちきっていないこれを全力で構い倒したら、どんなことになるかなんて、貧困な俺の想像力でも思いつく。
だったら他の奴で紛らわせた方がましだ。
そう思って自分の気をそらしていたら、出来上がったのがますます俺好みの性格。
俺だけを見ていればいい。
他があるなんて想像もしなくていい。
「ゆき、俺が所帯を持って子供を作らなきゃなんないのは、知ってるよな」
「うん」
「お前、世間一般的に言うところの俺の愛人になるか?」
「いいよ」
「いいこだ」
即答だぜ。
実の親より年上の男に囲われるのに、考えもしないってサイコーじゃねえか。
腹の底から笑いが込み上げる。
「一緒には住めないぞ」
「…うん」
「だから一人で生活しろ」
「え?」
「なりには許可をもらった。この部屋をやるから、一人で暮らせ。お前は俺のもんだ」
最初のコメントを投稿しよう!