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逆にここまで堂々としていたら、清々しく思えてくる。
しかし生徒達は、大切なお金を取られたく無いのか、ここで関われば、この先ずっと付きまとわれると恐怖しているのか、下を向いていた。
遥も同じように下を向く。
そして、自分が選ばれないように願っていた。
しかし、その願いは叶う事はなかった。
「そこの地味な女」
リーダー格の男はターゲットを決める。
その声に、遥は焦り始めた。
地味な生徒は遥以外に2人居たが、どちらも男子生徒であり、その条件に当てはまる女は、この教室には遥しかいない。
そう理解した遥は、意地でも顔を上げたくなかった。
が、遥に近づく足音が聞こえる。
そしてその足音が目の前で止まった。
遥は恐る恐る顔を上げる。
そこには、リーダー格の男が満面の笑みで立っていた。
「昼飯代、貸してくれるかな?」
ここで断れば、この胡散臭い笑顔は鬼の形相に変わる事が予想される。
所謂、笑顔の脅しというヤツだ。
遥は半ば諦め、財布を出そうとする。
が、財布は鞄と一緒に、教室の後方にある、個人ロッカーに置いていた事を思い出した。
「あの。財布は後ろのロッカーにあるので……取って来ていいですか?」
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