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柴木との約束を交わした日の夜、遥は家族で夕飯を取っていた。
「お母さん。私、勉強する事になったから」
突然の娘の宣言に、両親の箸が止まる。
「い、今……何て言ったの?」
「風邪でもひいたのか?」
信じられないと言った表情で、遥をみつめる両親に、段々と腹が立ってくる。
子共が勉強すると言っているのに、この反応はなんだと、遥は両親を睨み付けた。
「私が勉強するのが、そんなにおかしい事なの?」
声を荒げる我が娘を前にし、父と母は互いの頬を引っ張り合いながら、何かを確認する。
「ゆ、夢じゃないわ」
「そうだな母さん。これは夢じゃないんだ」
互いに確認し終えると、2人は大喜びする。
どこまでも失礼な親である。
しかし、今まで勉強の事を何も言われた事の無い遥は、大喜びする両親を見て、やはり勉強は大事なんだと認識し直した。
そして何故これまで、『勉強しろ』の言葉を言わなかったのだろうか。
「ねぇ。何で今まで、私の成績についてうるさく言わなかったの?」
遥はふと抱いた疑問を口にする。
すると、両親は互いの顔を見合わせ頷くと、母親が口を開いた。
「私も学生時代は随分親に言われたのよ。『勉強しなさい』って」
「俺も言われたなぁ。まあ父さんは人並みに勉強してきたから。人並みの暮らしが出来てるんだが」
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