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「どうして…」
愛用していたのを渡される意味はまだ幼いシンには理解できなかった。
不安を隠せない顔で見つめると頭を優しく撫でる。
「少し旅に出る。何かあったらバザガジールに言うんだ」
「旅ってどこにだよ!いつ帰ってくんだ!?」
「わからんが必ず帰る。それまでしっかり修行しているんだぞ?」
そっと手を離す、すると天から地へと降りる1頭の竜が現れる。
紅黒い鱗に傷だらけの竜・バザガジールはシドを見下ろす。
「…行くのか?」
「シンを頼むぞ。強い子に育ててくれ」
それ以上シドは何も言わず背を向ける。
遠ざかって行く背中をシンは黙ったまま見送る。
覇気のある男の姿はやがて見えなくなり完全に視界から消えた。
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