Courante

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「あ!風間君!丁度いい、一緒にご飯食べない?」 昼休みのチャイムが鳴った校内。風間は今朝の出来事を考えながら食堂へ行こうと教室を出た時、偶然通り掛った佐々木に声を掛けられた。 風間が片眉を上げると、佐々木は持っていた包みを差し出して言った。 「今日、外でピクニックする予定だったのに、一緒に食べる子が休みになっちゃって。私一人じゃ量も多いし」 「なるほど。他の奴も誘うか?」 「うん!あ、でも、そうだと量少ないかも…」 「大丈夫だろ。足りなかったら後で補えばいいし」 「そうだね!私も他の子誘うね!じゃ、噴水前で集合ね!」 そう言って佐々木は手を振って自分のクラスへ戻った。風間も佐々木狙いの面子数名誘おうと自分のクラスへ戻った。 そして昼食時、佐々木が働いている映画館へ通い詰めている友人と、その取り巻きの計三人、そして佐々木の友人三人、総勢八人でピクニックをする事になった。 どうらやお弁当は佐々木の手作りで、どの料理も美味しかった。サンドイッチ一切れしか食べていないが。 佐々木は男子だけではなく、女子にも人気らしい。女子が佐々木を取り巻いて他の男子と仲良く話していた。風間はその様子を見て青春を感じた。 「そういえば風間君、引っ越したんだって?」 佐々木の友人が風間に声を掛けた。 何処でその情報を知ったんだ?と風間は内心呟いていると、佐々木が「それはプライベートだぞー」とその友人の額に指を付けて軽く押した。それを見ていた男子、そして風間はその動作が可愛いと思った。 あっという間に楽しい昼食の時間が終わった。風間はこういうのも悪くはないと思いながら、午後の授業を受けた。 「なんかいい事でもあったのかい?」 「え、あ、いや。特には」 「嘘おっしゃい。音が軽く感じるよ?」 夜。食事後の一服で音慣らしをしていた時に天王寺はそう言った。 風間は余計な事を考えないように集中しようと目を瞑った。 「天王寺さんの耳は誤魔化されませんね。今日は亡き王女のためのパヴァーヌを演奏したいと思っています」 「わぉ!あれをチェロで聴けるのかい?!」 身を乗り出して目を輝かせた。勢いに押された風間は上擦った声で「はい」と返事をした。
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