Courante

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次の日。選択授業のため午後から登校した。教室に入ると生徒数が少ない。受験シーズンや就活真っ最中の高校三年生の登校数は少ないのだ。 「風間君」 席に座ろうとした時、廊下から自分を呼ぶ声に気付いて振り向くと、佐々木が手を振っていた。風間は軽く手を振り返して席に座った。 「風間君、用があって呼んだんだぞ」 何時の間にか佐々木が席の側に居て風間は驚いた。用があって呼んだのか。周りの視線が痛い。 「ごめん。で、どうしたの?」 「昨日はありがとう。とっても楽しかったよ!」 「こっちも誘ってくれてありがとう。友人達が喜んでた」 佐々木がニコニコとしていた。そういえば、今日の佐々木はお下げだ。 チャイムが鳴り、佐々木は「またね」と言って教室へ戻った。 風間が溜息を吐くと、周りからヒューヒューと野次を飛ばされた。今時ヒューヒューはねーだろ。 風間は教科書を持って選択授業の教室へ行った。 「響夜さー、最近佐々木さんと仲良いよな」 「そうか?」 「必ず呼ばれるだろ」 最前の席に座る佐々木の後ろ姿を見ながら、風間は「みんな同じだろ」と言って板書を写した。 時折佐々木の横顔が視界に入る。気付いた佐々木が手を振って来た。それを見ていた友人が肘打ちをして来たので振り返した。 「ありゃー絶対響夜の事が好きだな」 「お前はそんな下らない事しか考えられないのか?ほら、板書消されたぞ」 「え、うわっ!中先ひどっ!!」 そう言って友人は立ち上がった。中先と呼ばれた物理担当の中川教論は、「余所見してるからだ」と言いながら黒板の文字を全部消した。 放課後、担任に願書と入試日を伝えて帰ろうとした時、下駄箱で佐々木とその友人が話しながら靴を履き替える姿を発見した。 風間は気にせず自分のクラスの下駄箱で靴を履き替えて玄関を出た。 「風間くーん!」 今日何度目かの呼び出しに苦笑しながら振り返ると、佐々木が駆け付けて来た。佐々木一人なのか? 「一緒に帰ろうよ」 風間は校門の近くでその佐々木の友人と男子生徒が一緒に歩いているのを見て、「別にいいよ」と言った。
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