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今日も途中まで佐々木と帰り、家に着いた。玄関を開けると、いつも聞こえるクラシックが聞こえなかったので、天王寺は仕事で居ないのかと考えながら自室のドアを開けた。
「ーーっと、うわっ!?て、天王寺さん!?」
部屋に入ると、ソファーで横になってアレクサンドル・スクリャービンの本を顔に被って寝ている天王寺の姿があった。
(俺の部屋だけど、家主だから入るのは当たり前だよな)
風間はそっと机の横に荷物を置き、部屋着を持って自室を出て脱衣所へ向かった。
着替えた後部屋に戻ると、本が床に落ちていたが天王寺は眠ったままだった。風間は起こさないようにと物音を立てずに机の椅子に座り、宿題に取り掛かろうとした。
(しかし…この時間に天王寺さんが寝てるなんて珍しいな。疲れているのかな…)
背後から聞こえる寝息が気になり宿題どころではなかった。もしこのまま起きなかったら体に悪いと思った風間は、ソファーへ近付いて天王寺の肩を揺さぶった。
「天王寺さん。ここで寝ると体に悪いですよ」
しかし、天王寺はうんともすんとも言わず穏やかに寝ていた。風間は仕方がなく天王寺を自室へ運ぼうと思い、首と膝の裏に腕を通した。
(いや待てよ…流石にこれは恥だ。背負うか?)
風間は天王寺の肩を掴んで上半身を起こして座らせた。そして両腕を掴んで自分の肩に置き、両ひざ裏に腕を通して背負った。そしてそのまま部屋を出て、少し先にある天王寺の寝室へ向かった。
途中、仕事部屋のドアが開いているのに気付いて中を見ると、机上の電気が点いたままになっていた。後程消そうと考えながら部屋を通り過ぎ、天王寺の寝室のドアを開けた。
(この前も天王寺さんを運んだな…)
そう心で呟きながらベッドへ天王寺を降ろして掛け布団を掛けた。
(しかし、スクリャービンの本を見ながら寝るって…)
音楽の授業でスクリャービンの法悦の詩を学んだ時に嫌悪感を感じた風間からすれば、スクリャービンの本イコール成人向けの本として捉えてしまう。しかし、天王寺はそんな事を微塵も思っていないのだろうし、純粋にスクリャービンを調べていたに違いない。
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