Courante

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「風間君、心配事は口に出す方が楽になるんだよ?」 「あー…でもそんな大それた事じゃないから」 「の割にはずっと上の空だったじゃない。ほら、楽になりなよ」 迫る佐々木にお手上げになった風間は、天王寺の事を話し、昨日から帰って来ない事を説明した。 「うーん。確かに、今まで帰って来てない日がなかったのなら心配だね。携帯電話の電源が切れてるのは、もしかしたら充電器を忘れたかもしれなー。あ、でも…会社の電話で自宅に掛ければよかったんじゃないかしら?」 「それが、固定電話がないんだ。俺の電話番号も覚えてないだろうし」 「そうかー…。もし明日になっても音沙汰が無かったら会社に電話した方がいいね」 「ああ、そうする。何か悪いな、こんな相談に乗ってもらって」 「相談に乗るのは当たり前でしょー?それに、こんなって言わないの。大事な事でしょー」 そう言って佐々木は風間のおでこを押した。 風間は赤面を浮かべながらおでこを押さえた。 無事に文化祭一日目が終了し、風間は佐々木を有楽町まで送った。電車が来るのを待ちながら文化祭中に一切触れてなかったスマートフォンを取り出した。 「あ…」 画面には数件の不在着信の通知が表示されていた。 心臓が高鳴り、急いで画面をスライドして着信履歴を確認した。 (天王寺さん…!) 風間は天王寺の名前をタップしてスマートフォンを耳に当てた。 トゥルルルル…トゥルルルル…ーー 何度コール音が鳴っても天王寺は出ない。 丁度電車が来たので、風間は画面をタップして電話を終了させた。 目白に着き、風間は急ぎ足で天王寺宅へ向かった。にも関わらず、見慣れた道が中々変わらない。 (十五分間がこんなに長いとは思わなかった) やっと天王寺宅に着き、解除装置にカードキーをかざして扉を開けた。そしてそのまま真っ直ぐ天王寺の寝室に向かい、そっと寝室のドアを開けた。 寝室のベッドには、布団も掛けずスーツのままで眠る天王寺が居た。 (やっぱり寝てた…) 風間は安堵の溜息を吐いてドアを閉めた。 自室に戻る最中、風間は今の天王寺の様子を見て果たして明日の文化祭に来られるのだろうかと考えた。
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