Courante

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「隣の駅には四季劇場があったよな…今度観に行かないかい?」 「え、本当ですか?」 「勿論。それに競馬もやってみたい」 「え…マジすか?」 風間は苦笑を浮かべるも、このやり取りが心地良かった。二十分も掛かる通学路がほんの数分に感じた。 高校に着いて受付を済ませた天王寺は、貰ったパンフレットを開いてじっくり読んで「メイド喫茶は最後だな」と呟いた。それを聞いていた風間は、スマートフォンを取り出して佐々木にメールを送った。 「天王寺さん、メイド喫茶繁盛してるから早く行った方がいいみたいですよ」 「何!それは行かねば!」 天王寺がハッと顔を上げて目を輝かせた。二人は二階の三年生のフロアへ行き、四組のメイド喫茶へ入ると「いらっしゃいませ」とあのアニメ声で迎えられた。 風間は他のテーブルで注文を取っている佐々木を見て、天王寺に言った。 「紹介しますよ」 「何を?」 「彼女」 二人は席に着き、メニューを開いて佐々木に向かって手を挙げた。 「いらっしゃいませーーって、風間君!待ってたよ!ってことはこちらの方が?」 「そ。天王寺さん、この人が佐々木菜穂さん」 「初めまして。天王寺彩と言います。いつも風間君がお世話になってます」 「いえいえ。いつも風間君から素敵な方だと聞いています。どうぞ、ゆっくりしていって下さい」 佐々木は天王寺にウィンクした。 天王寺と風間は窓側の席に案内され、お互い向かい合うように座った。 「こちらがメニューです。決まりましたら呼んでください。ドリンクはオススメを推しますが」 「じゃあ私はオススメのやつ。風間君は?」 「俺も同じやつ」 「かしこまりました」 佐々木がオーダーのために去ると、天王寺はにやけ顔で風間を見た。 「可愛いじゃないか」 「俺もそう思います」 早速佐々木のオススメのドリンクが運ばれて来た。 「佐々木さん、ちょっとお願いしても?」 「はい、何でしょうか」 「風間君とのツーショットを撮ってもいいかい?」 すると二人は顔を真っ赤にした。 .
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