0話 独白。

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 笑顔で離れていくきみに、精一杯手を伸ばした。  でも、その手をきみは握ってくれなくて。  伸ばしたこの手は、ただひたすら空気を掴むことしか出来なくて。  結局俺は、本当に救いたい奴を。  本当に助けたかった奴を。  助けることは、出来なかった。  そして、気付いたんだ。  ようやく、気付けたんだ。  この世の仕組みを。  この世の仕掛けを。  それがあるせいで。  俺は、特別ではないことを。  俺が、唯一無二ではないことを。  だから、決めた。  相手にも、自分にも。  期待なんかさせないように、しないように。  誰にも手なんか、差し伸べないと。
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