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雨は、嫌いだ。
嫌なことを思い出すし、古傷がじくじくと疼く。
お酒は、好き。
割りと強いほうだと思う。
──── でも、どうせなら。
一人で、静かに飲んでいたい。
「ねぇねぇ、そんなところで一人で飲んでて、寂しくない?」
壁際で一人、冷やをちびちびと飲んでいる私に気を遣ったのか、一人の男が陽気に話しかけてきた。
私はチラッと男を一瞥して、すぐに視線を逸らす。
いかにも、チャラ男。
名前なんだっけ。覚えてないや。
「別に。大丈夫です」
短く答えると、誰からも相手にしてもらえなくて拗ねているとでも思ったのか、チャラ男は笑いながら私の横に腰を下ろした。
間近に体温を感じ、不快で思わず眉が跳ねる。
「まあまあ、機嫌なおしなよ。俺が付き合うからさぁ」
「……………」
「お、真白(ましろ)ちゃん。冷や飲んでるの? 女の子なのにシブイね」
………察しの悪い男は嫌いだ。
しかもこんな風に『浮いてる女の子ほっとけない俺、優しいでしょ』オーラをプンプン醸し出す男は、大嫌いだ。
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