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悄然とした私を見て溜飲を下げたのか、ハラちゃんは掃除の手を止めて体勢を起こした。
「────人を殺したことあるって言ったんだって?」
「……………」
私が何も答えないでいると、ハラちゃんはハアッと大きな溜め息をついた。
「もう7年も経つんでしょ? 25にもなって恋愛もしないで、一生そうやって引きずって生きてくつもり?」
「……………」
「実際ああいう場に参加したら、気持ちも変わると思ったんだけど」
ヤレヤレという風に肩をすくめ、ハラちゃんは掃除を再開させた。
木の床を無言でモップがけするその背中は、少し怒っているようにも見えた。
事情を全部知っているハラちゃんでさえ、きっと今の私を見ているとイライラしてしまうんだろう。
(………ごめんね、ハラちゃん)
心の中で、神妙に謝る。
机を拭きながら、彼の顔が鮮明に脳裏に浮かんできた。
────でもね、ハラちゃん。
私はもう、ずっと一人でいいの。
恋愛したいなんて、これっぽっちも思わない。
あの人のこと忘れられないし、忘れちゃいけない。
誰かを好きになる資格なんて、私にはもうないんだ……。
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