3rd move - 暴君

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吹き飛んだ魔王は、茂みに頭から突き刺さった。 そして僕の前に降り立つ人影。 誰かはすぐに分かった。 「姫!?」 「王子!」 僕が名前を呼ぶと、ルビーのように煌めく緋色の髪と浅葱色のドレスの裾を翻し、体ごとこちらを向く。 そして抱き着いてきてこう言った。 「すぐに助けに来れなくてごめんなさい。 神を名乗る変な奴に、妙な事を頼まれてしまいまして…… でも! 王子は人が良すぎますの! あんな得体に知れない変態のこと、簡単に信じちゃいけませんわ」 魔王が吹き飛んだのは、どうやらこの姫の飛び蹴りでみたい…… 姫のお転婆と気性の荒さは今年も健在。 「何か言いました?」 「相変わらず姫はパワフルだなぁ、って。 流石は狩猟とカーニバルの国、南の国のお姫様だね」 「ありがとうございます。 日々の鍛錬、欠かしたことありませんもの。 王子を守ると決めた、あの日から」 そんな事を、お陽さまみたいな笑顔で言われてもなぁ…… っていうより、‘私の大事な……人形ですから’とか聞こえた気がしたんだけど? 「…… っぐ、ぬおっとっ、あー痛ぇ」 茂みが揺れたと思ったら、頭に葉っぱやら枝やらをたくさん付けた魔王が、右頬を摩りながらもぞもぞど出てきた。 「痛ぇなぁ…… 何が起きたんだ? 」 「あら。 随分とお早いお目覚めですわね」 僕から離れながら、急に冷たい声音になる姫。 その夜明け前のような瑠璃色の瞳で魔王を見据えながら。        ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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